なんでも本棚。

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ディー判事 四季屏風殺人事件 (中公文庫)

評価:
R・ハンス ファン・フーリック
中央公論新社
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(1999-05)
 いったい何社から出ているんでしょう、ディー判事シリーズの中公文庫版。検索したかぎりでは、これ一冊だけでした。
 ウェイピンの知事にして高名な文人トン・カ ンは深い悩みにとらわれ体まで朦朧の淵にある。そこにやってきたディー判事、ほんの骨休めのつもりが、思わぬ事件にかかわることとなる。
 四季の光景を描いた屏風のもたらす予知夢と凶兆の物語は美しく、ま た中国の古典的な怪異譚としてサマになっているのだが。ディー判事の暴いてみせる内幕と実相は、浅ましくも物悲しい。ままならぬのが世の中よのう、という気持ちにさせられる。伍長の処遇のように、救いのある部分もあることはあり、やるせないばかりではないのだが。
 読み終われば、どれか1冊ならば、と、選ぶに足るデキと納得するのだが。
 カバーアートがなんというか原書の挿絵で、ふさわしく古めかしいのだが、事件の卑俗な面を想像させるので(笑)。新刊でこれ見てたら……買わなかっただろうな。 なるほど事件は社会の上層から下層までを容赦なく横断し、赤裸々な実相を暴いてみせるから、カバーで期待してたら、裏切られることはないんだけどね。なにぶん、むかしの話だ。
 また、発表当時、ミステリはまだまだこういう読み物として求められていたので、求めに応じて、このようなイラストがかかれたよし。

 なるほろ(汗。

JUGEMテーマ:読書


| 折原偲 | ミステリ | comments(0) | trackbacks(0) |
訃報】12/9 中村保男さん
  午後、mixiを流していて、初めて知りました。

アサヒ・コム おくやみ
「アウトサイダー」など翻訳、中村保男さん死去

訃報ドットコム
おくやみ:中村保男氏

 世間的には訳業は主にコリン・ウィルソンだし、教育者として、また翻訳研究の分野で知られているのだろうが。
 まだ創元推理文庫のSFだった時分、しかもカバーが抽象画ばかりの、ごく初期には、相当にお世話になった記憶がある。
 『結晶世界』しかり、『非Aの世界』しかり。
 あのころの翻訳調が苦手なひとも多かったようだが、なにしろ点数の少なかった時代でもあり、むさぼるように読んだものだった。
 そして、師匠から受け継がれたチェスタトンだ。ブラウン神父は言うまでもなく、『詩人と狂人たち』は忘れられない。
 わたしとしては『大地への下降』、そして『アルクトゥールスへの旅』(いずれも絶版)である。とくに後者は、平明な文章であるのに、わけがわからなくて、おそろしくてど こか可笑しく、美しい。ひしめくように現れる異星の生命体を絵に描いたら、それは美しいなんてもんじゃないのだが、言葉で表現されるそれは、啓示的で美しいのだ。小説としての構成とかリーダビリティは忘却の彼方、あふれだすイメージをひたすらおいかけていくような、こんなハナシが好きになれるのは若さの特権かもしれぬ(汗。仮に未読だったら、今は読めるかどうかわからんし。
 貪欲な若者だった時代でも、達意の文章の平明さがなければ、自分は追随できなかったと思われる。賛否両論は当時からあった。好みでしかない部分もあるし。

 サンリオSF文庫をひとからげに「あれは翻訳が……」と言われると「そういうのもあったよね〜」と含みのある答えを返してしまうのは、この2冊のせいなんです。

 このかたの訳業なくしては、好きこのんでSFや幻想文学を読むようになったかわかりません。わすれません。

 ご冥福を、お祈りいたします。

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評価:
中村 保男,中村 正明,デイヴィッド・リンゼイ
サンリオ
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(1980-06)
| 折原偲 | ニュース | comments(0) | trackbacks(0) |
恋のドレスと硝子のドールハウス―ヴィクトリアン・ローズ・テーラー 6
 ヴィクトリアン・ローズ・テーラーの6冊めである。図書館でだいぶ待ちましたが、ワタシが今読んでるなかで最も乙女成分の高いシリーズなのだ。さすがだ……(いみふめい)。
 前巻の事件以来、仕立ての仕事を受けなかったテーラー『薔薇色』に、新しいお客がやってくる。
 不思議なことに、後見役の従者を従えてやってきたのは弟だという少年で。姉のかわりにかれが着て、求婚者を引き付けておくために、恋のドレスを注文すると言うのだ。
 『薔薇色』のドレスは、そんなことでできるものではない。5冊読んできた読者はよく知っている。
 期待は裏切られはしない。
 採寸に訪れた郊外の館に住む、華奢で美しい、男女のふたご。
 どちらも女の子だったら、かえって幸せだったのだろう。
 高名な軍人の父は子供たち、ことに息子の体の弱さを受け入れられず、やみくもに強さを求め、やがて失望し、子供たちを顧みなくなる。
 しかし気管支の病が治らず我が儘放題に育った美少年が出てくるなんて往年の少女漫画のようであることよ。
 姉は病も癒え、弟のためにも結婚しなくてはならないと決意する。
 しかし弟にふりまわされ、自分の思いも口に出せない姉の話かと思って読み進めば、物語は思わぬ絡まりを見せる。 闇のドレスがやっぱり絡んで来るのだが、そのあたりの過去話は時間ぎれ次回に続くって感じで(笑)。
 長年の不在から帰還したのに、会う間もなく戦場に戻って行った父は、今までと違う言葉を残していく。姉も弟も、少しずつではあるが変化を見せる。

 そしてもちろん、クリスとシャーロックの気持ちも変化していく。ほんとに、少しだけどね(笑)。
 あの姉と弟がどう変わるのか、ちょっと見てみたい気がする。この先、出てくるかどうかは、わからないけれど。こういうふうに生まれついたのだから、どうしようもない、と片づけてしまわず、ドレスを注文した令嬢が内に秘めていたなにかをひきだす、『薔薇色』のクリスのドレスのような話だった。

 さて、次の巻を予約しなくてわ。

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| 折原偲 | ライトノベル | comments(0) | trackbacks(0) |
石榴ノ蠅 居眠り磐音江戸双紙 27
 出先の本屋で気がゆるみ、とうとう新刊買っちまいました。
 タイトルいまいちピンと来なかったけど、それはさておき。

 ガマンできなくて買ったわりに、期待通りに楽しかったって印象しか残らなかったわけで。
 それでいいのかもしれませんが。

 冒頭、磐音の羽州からの帰宅から始まるのだが。
 考えてみりゃ新婚半年にもならないうちに、昔の許婚を助けに旅に出ちゃうわけだ。しかも移動に時間のかかる時代とはいえ、一ヶ月半かかっている。おこんさんとしちゃ複雑だっただろう。
 再び苦界に沈むかもしれない、そうなれば生きちゃいないだろう、とまで言われたら、行かせなければ一生、わだかまりは残るだろう、と想像はつく。
 ただ、そこまで計算しないで行けと言えるのが、おこんさんなんだろうな。帰ってきたところで恨み言のひとつも言っちゃってるし。
 上様御側衆まで巻き込んで輿入れして、佐々木家の内所(家計?)を預かる段階になってからのエピソードだし、波乱はないよなあ、うん(笑。

 次はいつなんでしょうねえ。早い段階で予約入れられれば図書館、かなあ。
| 折原偲 | 時代もの | comments(0) | trackbacks(0) |
タイタス・クロウの事件簿
  図書館の新着に『タイタス・クロウの帰還』が入ってたんですが、買ってたかどうかもあやしいので1巻から。
 知る人ぞ知るアーカムハウス叢書『黒の召喚者』当時は買ってませんでした。なにしろゼニがなかった(笑。【SF美術館】のアーカムハウス叢書ページで確認したら、カバーアートが記憶にあるのは『呪われし地』でした。
 いやそれはともかく。ラヴクラフトの衣鉢を継ぎ、ダーレスの遺風を発展させたオカルト探偵物なわけで。「妖蛆の王」なんかもう伝奇アクション小説のアーキタイプそのまんまだ。
 『黒の召喚者』日本語版の序には「私は(私だけは)神話を死なせたりしない」と宣言されているのだという。
 そのとおり、神話はここに生きている。
 いくぶん限られた趣味であるにしろ(笑。

 こういう本こそ買うべきなのかもしれないが、とりあえず2巻『地を穿つ魔』を図書館で予約。
 たのしみだなあ。

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評価:
ブライアン ラムレイ
東京創元社
¥ 882
(2001-03)
コメント:モンスター系ホラーが好きな人ならガチで。古めかしいところがたまらないので、そういうお好みにもヨシ。
| 折原偲 | 幻想文学 | comments(0) | trackbacks(0) |
『オーバーン城の夏』(2分冊)
 ルルル文庫はライトノベルのレーベルなので、この本もライトノベルなんだけど、なにしろシャロン・シンなのだ。『魔法使いとリリス』の。
 いや、あれはハヤカワ文庫FTで、そぎおとされ絞り込まれた話だった。題材にも合っていた。
 こちらは2分冊とやや長く、ライトノベルだから対象年齢は中高生以上、主人公も若いし、書かれかたから違うわけで。
 主人公は少女、いや、語り始めはむしろ子供だ。祖母に薬草のまじないを学ぶ見習いで、村で暮らしているけれど、夏だけ、オーバーン城に行く。行方知れずの母親がコナをかけた男が、大貴族の当主だったから。

「いくつかの種類のほれ薬があるんだけど、作りかたを知ってるのは一つだけ。よく効くんだけど――なんて言ったらいいのかな――あなたのいいところや魅力に目を開かせる、ただそれだけなの。そのひとにあなたのことを気づかせてはくれるけれど、ほれさせるわけじゃない。それは自分でしないとならないの。にせものの欲望を生み出す薬もあるわ。だけど、わたしはそういうのは作り方を知らないの。……知っていても、そんなの作らないけれどね。そういう薬作りは、わたしはしないの」
 ちょっとお上品ぶって付け足した。

上巻245ページ
 城内で初めて薬作りの依頼を受けた時の、このくだりは象徴的だ。自分のわざに害がないことを証だてるため、コリーは自ら言い出して、この薬を飲んでみせる。
 その効き目ばかりではないのだろうが、これ以後コリーは、ものの見方を変えていく。
 貴族であっても、ひととして望みのままに生きることは難しく、またその制約の多い生活も、数多の犠牲のうえに成り立っている。たとえばフランスの伝説のフェイに似た超自然的な種族アリオラが与えてくれる慰めを必要不可欠としながらも、奴隷としてかれらを拘束し使役していること、かれらの苦しみには目を向けようともしない。鷹や犬ではない、人と変わらないアリオラを狩り、奴隷として売買することを良くないと感じていても、正そうとはしない状態。それは、おのれより弱い立場にある人間を、意のままになる道具と扱う貴族社会の写像にほかならない。
 貴族社会の頂点であるはずの憧れの王子様ブライアンの本性が、徐々に明らかになる。コリー自身に目を向けてくれた(真意は別にあるとしても)叔父のジャクソンが、叔父自身の望みと向き合い変わっていく過程を目の当たりにして、コリーもまた、わきまえのない子供から、ひとりの大人に変貌していく。
 見たもの聞いたものをそのとおり受け取る、言ってみれば無垢な状態から、隠された何か――誰かに寄せるせつない思いや、絶望にちかい願いに気付き、思いをいたすようになっていく、その変化は実に見事だ。
 導入部の子供っぷりも見事なのだが、読むにはいささか厳しかった。アリオラのいる自然を描くにはこの分量が必要なんだろうとは思うが。ここでストレートに感情移入できないのは、ひとによっては厳しいとおもう(汗。

 以下、やや内容に踏み込むので折り畳んでおきます。
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| 折原偲 | ファンタジー | comments(0) | trackbacks(0) |
紅花ノ邨―居眠り磐音江戸双紙 26
 図書館で最初はぽつぽつ、残りは3〜4冊まとめて借りて読み進んできたこのシリーズだが、あと2冊のところでつっかえた。今年7月刊行の26巻は80人待ち。今年9月刊行の27巻は160人待ちなのだ。 それぞれ所蔵数は20冊近いので、2週間で単純計算しても26巻は2ヵ月待ち、最新刊はその倍…… それはちょっとなあ。
 悩みつつ、念のために図書館の近くのリサイクル書店に寄ってみたら、ありましたよ。半額だったし、状態もまあまあだったので、迷わず買いました。これまで探し歩いた本とちがって、よく売れてるシリーズだからか、こんなこともあるんだなあ。
 さて。
 紅花大尽前田屋内蔵助に嫁に行った以上はもう物語から退場したかと思われた、かつての許婚、奈緒がふたたび、物語に現れる。紅花売買の権益を独占しようと動く一派によって、前田屋は身代を失うばかりか、生命までも危険にさらされる。他家に嫁いだ以上、もう関係ないと言ってしまえる磐音ではないし、気持ちを察して行けと自ら言いだせるのがおこんさんなのだ。頭あがらないね(笑。
 三味芳の鶴吉の勧めで端唄の稽古の始まる佐々木道場の平穏と、風雲逆巻く羽州の対照が 鮮やかだった。
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| 折原偲 | 時代もの | comments(0) | trackbacks(0) |
「居眠り磐音江戸双紙」読本
 おこんさん奉公のいきさつが語られる番外編「跡継ぎ」は、シリーズ読者には欠かせないものとして。
 江戸時代豆知識みたいなコラムはパラ読み程度だったけど、地図と年表は役に立った。
 品川柳次郎の家から佐々木道場まではたしかに遠い。現代の道路でも7kmちかくある。
 これじゃ歩くだけで丸顔も引き締まっちゃうよ、と思ったことでした(笑)。

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白桐ノ夢―居眠り磐音江戸双紙 25
 庭先に育つ桐の木は、なにかしらの夢を託して植えられたものだという。箪笥を作る材木として、生まれた女の子が大きく育ったら嫁入り道具にと植えるものだとはよく見るネタだ。
 むろん、全ての夢がかなうはずはない。
 この話ではないが、大きく育った桐の木の下に陋屋があり、年寄りがひっそり暮らしているような、そんな挿話の使われかたもあるのだが。
 もの悲しい話はさておき。
 佐々木家の若夫婦に心づくしの祝いにと、出入りの棟梁が桐の苗木を植えに来る。その桐の木は、一度は断絶と思われた佐々木家の存続ばかりでなく、若夫婦の幸せを祈るものでもあるはずだ。
 そして磐音の後ろ姿を桐の木に重ねるおこんも薄々とは察しているのだが、佐々木の家には秘密裡に受け継がれてきた使命がある。
 これもまた、昔日の誰かの願いであったのだ。
 誰かに後事を託そう、未来を守ろうと願うもの、託されるものも一人ならず、柳原土手に現れた殴られ屋こと向田源兵衛も似たような定めを負わされている。使命を果たす技倆を備え、おのれの身をたてる才覚もあるよういながら、裏切ろうとも考えない、かれのキャラクター造形がツボにはまったというか。泣き笑いのような、複雑な表情が思い浮かぶような気がして切ないような、不思議な幕切れだった。
 品川柳次郎は尚武館の門弟となり、竹村武左衛門のところからは娘の早苗が奉公に来て、舞台はいよいよ深川から、江戸城に程近い武家地に移る。おこんとの暮らしをはじめとする、日常の物語も続くだろうけれど。メインの話はどんどん影目付っぽくなっていくんだろうなぁ

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| 折原偲 | 時代もの | comments(0) | trackbacks(0) |
朧夜ノ桜―居眠り磐音江戸双紙〈24〉
 麻布村の白梅屋敷、桂川甫周国瑞の祝言に始まる24巻である。おこんさんは武家に養子に入り、磐音との祝言にむけて着々と準備は進んでいく。
 磐音が敵討ちを助太刀した三味線職人の鶴吉が旅から帰って、江戸で絶えていた三味芳の暖簾を再び掲げ、そのため磐音が走り回ったりと、相変わらずではあるのだが。
 悪役がなに しろ当代随一の権力者なだけに、剣風も絶えることがない。師匠で養父の佐々木令圓ですら伝説を通じてしか知らないという剣客が5人も、磐音を狙う刺客として集められてしまうのだった。
 幕切れ、薄雲に月も霞む朧夜に、咲き誇る桜の沈む光景が、先行きの闇をはらんで美しい。
 家基の今後が史実に沿って進むなら、この状況は必ず決結節点を迎えるはずで。そのとき、どうなるかが楽しみではある。

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| 折原偲 | 時代もの | comments(0) | trackbacks(0) |
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